所有不動産を売却する場合には、様々な諸経費が発生します。
今回は、売却時に発生する諸費用について
事前知識として知っておいてほしいことをまとめました。
本題に入る前に、諸費用のざっくりした相場をお伝えします。
諸経費の相場は 売却価格の約4~6% と言われています。
例えば、3000万円で不動産(土地・建物)を売却する場合
おおよそ 120万円〜180万円 の諸費用が発生
そのため実質は3000 – 180 = 2820万円ほどが手元に残る ということです。
諸費用の中には控除や割引が使えるものもあり
いかにお得に抑えるか、が重要なポイントとなってきます。
不動産売却にかかる諸経費リスト
- 仲介手数料
- 印紙税
- 抵当権等の抹消登記にかかる費用(ローン残債がある場合)
- ローン一括返済時の手数料(ローン残債がある場合)
- 譲渡所得税、住民税(売却利益が出た場合)
上記のリストは売却時、必ず発生する費用となります。
それぞれの内容と相場を見ていきましょう。
仲介手数料
仲介手数料は、不動産会社に支払う手数料です。
不動産売却のために、代わりに販売活動をしてくれる不動産会社に対して
不動産が売れた時に成功報酬として支払うお金が、仲介手数料です。
これが諸費用の中で最も大きな金額となります。
「成功報酬」なので、仲介を依頼するだけでは費用は発生しません。
あくまで、売買が成立したときに、発生する費用となります。
仲介手数料には、宅建業法に基づいて上限が定められています。
※消費税が課税されるため、下記は消費税込みの速算式で表記します。
売買価格 | 仲介手数料(消費税10%の場合の速算式) |
---|---|
200万円以下 | 不動産の売買価格 ×5.5% |
200万円超え 〜 400万円以下 | 不動産の売買価格 ×4.4% + 2.2万円 |
400万円超え | 不動産の売買価格 ×3.3% + 6.6万円 |
例)3000万円の不動産を売却する場合
3000万円 × 3.3% + 6.6万円 = 105.6万円(税込) を上限とした仲介手数料が発生
金額が大きいため、ここはお得にしたいところですね。
上記はあくまで上限金額なので、値引き交渉の余地があります。
不動産仲介業者のキャンペーンを活用したり、うまく交渉することで
仲介手数料をお得にすることができます。
仲介手数料のポイント
- 上限額は、不動産の売買価格 ×3.3% + 6.6万円(売買価格が400万円越えの場合)
- 仲介を依頼した時点ではなく、売買契約が成立した時に発生
- 値引き交渉の余地がある
★値引き交渉のポイント
- 媒介契約を交わす前のタイミングで相談する
- 他の不動産仲介業者と迷っている場合は素直に伝える
- 専任媒介 or 専属専任媒介 での契約を依頼する
→ 媒介契約には一般/専任/専属専任 という3種類があります。
一般媒介は、複数社と媒介契約を結べる契約形態です。
それに対して、専任/専属専任媒介は、1社としか媒介契約を結びません。そのため成立時は確実に仲介手数料がもらえることから、値引き交渉に応じてもらいやすいです。
印紙税
印紙税は、売買契約書など法的な書類(課税文書)にかかる税金です。
契約書に収入印紙を貼り、それを消印することによって収入印紙を使用したとみなされ、納税されます。
印紙税の金額は、取引金額によって異なります。
※2024年現在、不動産売買の印紙税には軽減措置が設けられています。
記載金額が10万円を超えるもので、2014年4月1日〜2027年3月31日の間に作成される契約書には軽減税率が適用されます。
契約金額 | 本来の印紙税額 | 軽減税率適用後の印紙税額 |
---|---|---|
10万円超〜50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超〜100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円超〜500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超〜1000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1000万円超〜5000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5000万円超〜1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超〜5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
例)3000万円の不動産を売却する場合
契約書1枚あたり1万円の印紙税が発生することになります。
売主と買主で2通分作成する場合は、1万円×2枚 = 2万円必要となります。
実際には、これを双方で平等に負担するため、売主・買主の負担はそれぞれ1万円です。
また、印紙税のポイントは下記の通りです。
印紙税のポイント
- 負担額は1万円(取引価格が1000万円超〜5000万円以下の場合)
- 紙で売買契約を締結した場合のみ発生
- 電子契約の場合は発生しない
- 不動産売買契約は通常、売主/買主で1通ずつ原本保管するため2通作成される
→ 紙の契約書を複数作成する場合は、それぞれに収入印紙と消印が必要 - 書類作成者が納税義務者のため、署名捺印をする 売主/買主 で平等に負担する
抵当権等の抹消登記にかかる費用
抵当権抹消登記費用は、ローン残債がある場合に発生する費用です。
金融機関はお金を貸し出す際、対象の土地・建物に”抵当権”を設定します。
抵当権とは
借主がお金を返済できなくなった場合などに
借主が担保とした土地・建物を競売にかけることで
優先してお金を取り戻せる、というものです。
つまり、お金の返済ができなくなると
金融機関が対象の不動産を差し押さえる可能性がある、ということです。
ローンを完済すると抵当権は自動的に消滅しますが
登記簿謄本に記載の抵当権を消去するには、別途手続きが必要です。
これが今回の、抵当権抹消登記です。
※抵当権抹消登記は義務ではありません。
但し消去しないと、第三者から抵当権が残っているように見え、新たな融資を受ける場合などに不都合が生じる可能性があります。
そのため抹消登記は行った方が良いと言えるでしょう。
費用は、不動産1件につき1,000円の登録免許税がかかります。
土地と建物の場合は2件とみなされ、2,000円です。
個人で行うこともできますが
手続きが複雑なため、司法書士に依頼するのが一般的です。
その場合、約15,000円の司法書士手数料が必要となります。
(手数料は依頼する司法書士によって異なります)
抵当権抹消登記にかかる費用のポイント
- 相場は約2万円弱(登録免許税2,000円+弁護士費用15,000円前後)
- 自分で手続きすることも可能だが、司法書士に依頼するのが一般的。
→ 自分で行う場合でも、合計約4,000円程度必要(登録免許税2,000円+書類取得等の雑費) - 抵当権とは…
お金の借主が返済できなくなった場合に、金融機関が対象の担保を差し押さえ、優先的にお金を取り戻せる権利のこと
ローン一括返済時の手数料
ローン残債がある場合、一括返済のために金融機関の事務手数料が必要です。
但し手数料は、金融機関によっても異なり、窓口orインターネットで行うのか、によっても異なります。
ローン一括返済時の手数料のポイント
- 窓口で行う場合の相場は 約3.3万円前後(金融機関によって異なる)
- インターネットバンキングの方が手数料は安い(金融機関によって異なる)
例)三井住友銀行の場合
窓口(書面):22,000円
インターネット:5,500円
譲渡所得税・住民税
譲渡所得税は、売却による利益にかかる税金です。
そのため、売却益がない場合は、譲渡所得税は発生しません。
売却による利益(譲渡所得)は、下記の計算式で求められます。
譲渡所得[売却益] = 譲渡収入金額[売却価格] − 取得費 − 譲渡費用
取得費:購入時にかかった費用。購入価格、購入時の仲介手数料、税金、リフォーム費など。
譲渡費用:売却時にかかった費用。売却時の仲介手数料、税金など。
実際には、自己居住用であれば最高3000万円までは特別控除を利用できるため、非課税となります。
★参考 特別控除一覧
- マイホームを売却した時の3,000万円の特別控除
- 公共事業のために売却した時の5,000万円の特別控除
- 特定土地区画整理事業などのために売却した時の2,000万円の特別控除
- 特定住宅地造成事業などのために売却した時の1,500万円の特別控除
- 平成21年、22年に取得した国内の土地を譲渡した時の1,000万円の特別控除
- 農地の保有化などのために売却した時の800万円の特別控除
また、譲渡所得にかかる税率は売却した物件の所有期間によって変わります。
所有期間 | 税率 | |
---|---|---|
短期譲渡所得 | 所有期間5年以下の土地・建物 | 39.63%(所得税 30.63% 、住民税 9%) |
長期譲渡所得 | 所有期間5年を超える土地・建物 | 20.315%(所得税 15.315% 、住民税 5%) |
譲渡所得税のポイント
- 課税される譲渡所得 = 売却価格 − 購入時にかかった費用 − 売却時にかかった費用 −(特別控除)
⇨特別控除により自己居住用であれば3000万円までは非課税となり、課税されることはほぼ無い!
⇨購入時にかかった費用(取得費)は、計算が少々複雑で長くなるため、一旦割愛しますmm - 譲渡所得にかかる税率は、所有期間が5年以下か、5年を超えるか、によって異なる。
⇨特別控除が使えない投資用物件などは、所有が5年以下だと税率が高くなってしまうため、長期的目線での購入がオススメ。 - 購入時にかかった費用(取得費)はそれを証明する書類が必要。
⇨購入時の売買契約書、リフォーム時の請求書や領収書等は必ず取っておきましょう。
<注意>取得費用が証明できない場合は、取得費は売買価格の5%とみなされます。
この場合は高額な税金が発生してしまう可能性が高いです。
不動産の売却にはこれだけ多くの費用がかかります。
中には計算が複雑なものも多いため、実際には仲介業者のサポートありきで行います。
但し、事前知識として知っておくことで、高額な請求の回避や、諸費用の節約に繋がります。
各項目のより詳細な注意事項については、改めて記事にできればと思います。
この記事が、誰かの役に立てると嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました!